相続登記の義務化について~制度について専門家が紹介~
相続登記はなぜ義務化されるのか?
これまで、相続が発生した場合でも相続登記は義務ではなかったため、土地の評価が低かったり手続きが面倒だと感じた場合など相続登記を放置しているケースが多々ありました。
長い間、相続登記を放置していると、土地の所有者が誰なのかを把握ができないことも…
土地の所有者が不明の空き家や荒れ地は処分することが困難になる事が多く、周辺の土地の地価が下がったり景観が悪化したり、更には一部の所有者不明の土地が原因で公共事業や都市開発が進まないという問題が起こってしまいます。
現在、このような所有者不明の土地の増加が社会問題となっており、所有者が分からない土地がこれ以上増えないように相続登記が義務化されることになりました。
不動産の名義変更(相続登記)が必要な理由について詳しくはこちら>>
2024年4月より相続登記が義務化されました。
これを踏まえ、以下では相続登記が義務化されることになった背景や改正におけるポイント、土地の所有者が取るべき対策についてお伝えさせて頂きます。
所有者不明の土地とは?
所有者不明の土地とは、国土交通省によると「不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない、又は判明しても連絡がつかない土地」を所有者不明の土地と定義しています。
通常、土地を相続した人は、相続登記(不動産の名義変更)をすることになっていますが、下記のような様々な事情で相続登記を放置しているケースが多くあります。
・日中は忙しくて市役所や法務局に行く時間がない
・相続人全員の同意を求めるなどの手続きが煩雑で司法書士費用もかかる
・相続人同士で揉めていて、誰が土地を相続するかが決まらない
・相続登記は義務ではないのでやる必要がないと思っている
これらの事情によって相続登記を放置することで、「土地の所有者を把握できない」、「名前が確認できたとしても居所がつかめない」という問題が増加していると言う背景があります。
法務省による不動産登記簿における相続登記がされていない土地調査をした結果(平成29年法務省調査)最後の登記から50年以上経過している土地の割合は大都市で約6.6%、中都市・中山間地域で約26.6%という結果がでています。
更に、地籍調査における土地所有者等に関する調査(平成30年版土地白書114頁参照)では不動産登記簿のみでは所有者の所在が確認できない土地の割合は約20.1%と、長期間登記されていない土地は、現に所有者がわからなくなっているか、将来所有者がわからなくなる可能性が高いと考えられます。
所有者不明の土地があることのデメリットとは?
ここからは、所有者不明の土地にどんなデメリットがあるのか解説致します。
1.土地の売却ができない
相続登記や住所変更登記が放置されていて登記簿で売主の名義が確認できなければ、土地の購入希望者は危険を感じて取引に応じてくれない可能性が高いです。
不動産を売却する場合は、必ず相続登記をした上で売却を進める必要があります。
2.所有者不明の土地は有効活用しづらい
土地を取得したり利用したりするときは、所有者の同意が必要になります。
登記簿から所有者が判明しない所有者不明の土地は、主に下記の2点で土地の有効活用の妨げになっています。
①所有者の探索に手間がかかる
②所有者の同意を得るのに手間がかかる
相続登記が行われないことで所有者不明になっている土地は、亡くなった人が登記簿上の名義人となっています。
法律上は、所有者が死亡した土地は相続人が共同で相続するため、名義人の相続人を探し出す必要があります。相続人の探索は戸籍収集により行いますが、本来の相続人からさらに相続が発生している場合も多く、相続人の探索には時間がかかります。
長期間にわたり相続登記が行われなかった場合、相続人が十数人に及ぶこともあります。
また、所有者不明土地の所有者(名義人の相続人)を探し出したとしても、国や自治体等がこれを有効利用するには相続人の全員と交渉して同意を得る必要があります。
相続登記の義務化に伴う改正ポイント
相続登記の義務化に伴う改正ポイントは下記の通りです。
・相続で不動産取得を知った日から3年以内に相続登記(名義変更)をしないと10万円以下の過料の対象となる
・遺産分割後の名義変更登記も義務化される
・遺産分割がまとまらず相続登記をできない場合、相続人であることを申告すれば相続登記をする義務は免れる。
その場合には、法務局(登記官)が登記簿に申告をした者の氏名住所などを記録する(相続人申告登記)。
・相続人に対する遺贈や法定相続登記後の遺産分割による名義変更が簡略化され、不動産を取得した者からの申請で名義変更ができる。
・住民基本台帳ネットワークシステムで、法務局(登記官)が登記簿上の所有者が死亡していること把握した場合には、所有者が死亡していることを登記簿に記録することができる。
相続登記の義務化
不動産の相続が発生した際は、相続により不動産の所有権を取得した者は、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に不動産の名義変更登記をしなければなりません。
これは、遺言などの遺贈により所有権を取得した者も同様です。
遺産分割後の名義変更登記も義務化される
相続人間の遺産分割がまとまらず、すぐに相続登記ができないときは民法で定める法定相続人が法定相続分で登記を行うことにより、当初の義務を免れることができます。
しかし、そのままだと法定相続分に従って、不動産の共有をすることになってしまいます。
そこで、法定相続分による相続登記後、遺産分割協議を行うことにより遺産分割で取得した相続人は、相続した不動産の相続登記(名義変更)を行う必要があります。
この遺産分割による名義変更においても、遺産分割の日から3年以内に登記をすることが義務づけられます。
このように義務を免れるために法定相続分での登記手続きを行うことには、手間とコストがかかります。
そこで、遺産分割がまとまらず速やかに相続登記をできない場合には、相続人であることを申告すれば相続登記をする義務は免れる制度(相続人申告登記)が設けられました。
この制度が利用された場合には、法務局(登記官)が登記簿に申告をした者の氏名住所などを記録します。
義務化に伴う登記手続きの一部が簡略化
これまで、相続人に対して相続財産の一部を遺贈する内容の遺言があった場合には、不動産の遺贈を受ける者以外に法定相続人全員(遺言執行者がいるときは遺言執行者)の協力がないと遺贈による名義変更手続きができませんでした。
協力をしない相続人等がいると義務を履行できないため、改正後は遺贈による名義変更は、不動産の遺贈を受けた者が単独で申請することができるようになりました。
また、法定相続分による相続登記後、遺産分割による名義変更登記も、他の相続人の協力がなければ名義変更ができなかったのが、法改正により、不動産を取得した者の単独で申請することができます。
登記をしてない不動産がある場合
今回の法改正前に相続が開始している場合でも、3年の猶予はありますが義務化の対象になります。
まずは、ご自身がその対象になっているのかどうかを確認することをおススメします。
現在の登記を調べる方法としては、法務局に行けば不動産登記の全部事項証明書を取得することができます。また、インターネットで登記情報を取得できるサービスもあります(有料)。
相続登記は専門家に依頼しなくても自分で手続きをすることができますが、日中は忙しくて法務局や市役所に行けない方や相続人が多い方などは手続きに多くの手間がかかります。
自分で手続きをすることが難しい場合や時間がない方や何代にも渡って相続登記をしてない場合は相続登記の専門家である司法書士に依頼することをおススメします。
当事務所は相続の累計相談実績1000件以上と豊富な相談実績がございます。
相続登記やその他の相続手続きについてお悩みのお客様は、ぜひ当事務所の無料相談をご利用くださいませ。
相続登記しないとどうなるの?
相続登記をしていない不動産を持っている方、あるいは不動産を相続する可能性のある方にとって、相続登記をしない場合の罰則は非常に気になるポイントです。
「相続から3年以内に相続登記申請しなければ10万円以下の過料」
「住所や氏名の変更においても、2年以内に登記申請しなければ5万円以下の過料」
「法人の場合、本社の登記変更申請をしなければ過料」
という罰則が科せられることになっています。
罰則を定めることによって、持ち主が分からない不動産が減らす効果が期待できるでしょう。
不動産の管理には手間も費用もかかりますが、相続登記義務化に併せて、管理できない土地を放棄する制度も作られています。
この記事の執筆者
- リーガルフロンティアグループ 代表司法書士 小西克広
-
保有資格 司法書士(大阪司法書士会所属 第2758番)
宅地建物取引士(未登録)経歴 2003年司法書士試験に合格後、大阪市内の司法書士法人に勤務。
約2年の経験を積み、2005年司法書士法人リーガルフロンティア入所。
2010年に組織変更により、新たに司法書士法人リーガルフロンティア WEST を設立
現在代表社員として、 事務所運営に注力する。
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